基本のブドウ品種

【品種の違いを解説】サンジョヴェーゼってどんな品種?産地と特徴をご紹介!!

ハッチ

ぶんぶーん!
今日はイタリア原産の世界的に有名なブドウ品種サンジョベーゼをご紹介するよ!

サンジョヴェーゼとは?

サンジョヴェーゼの特徴

果皮は薄くデリケートで比較的病気に弱い品種であるにもかかわらず、成熟までの時間がかかる晩熟型のブドウ品種です。栽培土壌の適応範囲が広く、近年では原産地イタリアを離れアメリカやオーストラリアなどでも栽培されているイタリア品種唯一の国際品種となっています。
また、成熟が遅いため暑い年には重厚でアルコールが高く長期熟成に耐えるワインに仕上がり、寒い年には酸とタンニンが際立つ傾向にあります。

ピノ・ノワール同様、突然変異しやすいブドウ品種としても有名で非常に多くのクローン品種が存在しますが、大きく分類するとサンジョヴェーゼ・ピッコロとサンジョヴェーゼ・グロッソの2種類に分類されます。

  • サンジョヴェーゼ・ピッコロ〈Sangiovese Piccolo〉
    ピッコロ〈Piccolo〉は、「小さな」という意味があり、粒が小さいサンジョヴェーゼのことを意味しています。若々しくチャーミングな果実味と酸味、少し青みを含む荒いタンニンが特徴です。
  • サンジョヴェーゼ・グロッソ〈Sangiovese Grosso〉
    グロッソ〈Grosso〉は、「大きな」という意味があり、粒が大きいサンジョヴェーゼのことを意味しています。粒が大きいと果汁量が大きくなり風味が薄いワインができやすいですが、サンジョヴェーゼ・グロッソは果皮も厚くコクのある素晴らしいワインを作ることができます。

※最近サンジョベーゼは、DNA鑑定によってチリエジョーロ種とカラブレーゼ・モンテヌオヴォ種が自然交配して生まれた品種だということがわかっています。

香りや味わい

香り

フレッシュなイチゴやサクランボの果実香からスミレなどフローラルな香り、香辛料やスパイシーな香りがあります。熟成が進むと熟したブルーベリーやプラムやドライフルーツ、なめし革やカカオ、コーヒーなどの香りが出てきます。

味わい

  • サンジョヴェーゼ・ピッコロ
    チャーミングな果実味と豊富な酸味が特徴。少し荒めタンニンが特徴で青みがかった渋さを感じます。
  • サンジョヴェーゼ・グロッソ
    プラムやプルーンのような重厚な果実味があり、凝縮感の強いワインができます。酸度も高くタンニン分もきめ細かで長期熟成にも耐えられるフルボディなワインが多いです。

品種名の由来と各産地での呼び名

品種名の由来

古代ローマ時代より栽培されているサンジョベーゼの品種名の由来は、ラテン語の「Sauguis Jovis(Iovis)」が語源とされ、Sanguis〈血液〉Jovis〈ジュピター/ユピテル〉という意味から「ジュピターの血」という意味合いがあります。ジュピターはローマ神話の最高神のことを指しており、ギリシャ神話でいうと「最高神ゼウス」に当たります。

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キリスト教では、ワインはキリストの血として扱われていたこともあり、昔の人はワインを神聖なものとして扱っていたんだね!

各産地での呼び名

  • イタリア🇮🇹 トスカーナ州モンタルチーノ村 ブルネッロ種〈Brunello〉
    ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ〈Brunello di Montalcino〉の原料となります。
  • イタリア🇮🇹 モンテプルチアーノ村 プルニョーロ・ジェンティーレ種〈Prugnolo Gentile〉
    ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチアーノ〈Vino Nobile di Montepulciano〉の原料となります。
  • イタリア🇮🇹 トスカーナ州スカンサーノ村 モレッリーノ種〈Morellino〉
    モレッリーノ・ディ・スカンサーノ〈Morellino di Scansano〉の原料となります。
  • フランス🇫🇷 コルシカ島 ニエルッキオ種〈Nielluccio〉
    パトリモニオ〈Patrimonio〉の原料となります。

◯トスカーナのワイン産地

【画像参照元:vineyards.com(https://vineyards.com/wine-map/italy/tuscany)】

原産地と主な生産地

原産地

イタリアのトスカーナ州が原産です。

主な生産地

  • イタリア🇮🇹 トスカーナ州、エミリア・ロマーニャ州、ウンブリア州、マルケ州
  • フランス🇫🇷 コルシカ島
  • アメリカ🇺🇸
  • アルゼンチン🇦🇷

栽培と醸造

イタリアでは、サンジョヴェーゼを使ってD.O.C.G.やD.O.C.クラスの格付けワインを数多く生産しています。一方で、トスカーナ州の海岸部では、サンジョヴェーゼに国際品種〈カベルネ・ソーヴィニヨン種やメルロー種〉をブレンドさせたVino da TavolaやI.G.T.クラスのワインを生産しており非常に高品質なワインを生産しています。イタリアのワイン法では下部の格付けになりますが、高品質で人気のあるワインは、世界的にも注目度が高くスーパータスカン〈もしくはスーパートスカーナ〉と呼ばれております。

スーパータスカンの生産者は、イタリアの新たなワインスタイルを目指す革新派が多く、フランス系の国際品種とブレンドさせ、凝縮感がありフルボディなワインを造ることが多いです。

伝統と革新の間で揺れ動くサンジョヴェーゼ

キャンティとキャンティ・クラシコ

  1. キャンティの誕生
    トスカーナ州のフィレンツェとシエナに挟まれた美しい丘陵地帯はキャンティ地方と呼ばれており、香り高い優雅なワインを生産する土地でした。キャンティ地方で造られた品質の高いワインは、土地の名前を取り「キャンティ」と呼ばれ世界的にも認知されるようになりました。
  2. イタリアワイン法の始まり
    1716年、トスカーナ大公国のコジモ3世が、自国のワインを守るためにキャンティを始めとするワイン生産地の線引きをしました。品種の規定は明確にありませんが伝統的な品種であるサンジョヴェーゼを使用したワインをキャンティと呼ぶようになりました。
  3. キャンティとキャンティ・クラシコ
    20世紀に入ると世界的にもキャンティ人気が加速し、本来の生産エリア周辺でもキャンティと同じようなワインが造られるようになり次第にそれらを総称して生産されたワインを「キャンティ」と呼ぶようになりました。キャンティ人気は止まず、需要が膨らんでいくと粗悪なワインを生産してもキャンティと名乗れる生産地であれば、「キャンティ」と名乗れる状態が続きました。その結果、キャンティは品質の良くない安いだけのワインだというようなレッテルを貼られるようになります。そうした状況が続き、古くから真面目にキャンティを生産していた生産者たちはキャンティを守るために保護団体を設立させました。保護団体の活動もあり、1934年には本来の原産地と区別するために、古くからの生産地で造ったキャンティワインを「キャンティ・クラシコ」と区別し、それ以外の場所で造られたワインを「キャンティ」と呼び区分けを明確化させていきます。
  4. ワイン法の制定とD.O.C.G.キャンティ
    1966年イタリア初の原産地呼称法ができると、1984年には本来のキャンティ生産エリアとその周辺も含めたエリアをD.O.C.G.として認められることになります。この時は、まだ「キャンティ・クラシコ」のエリアにあたる地域は、「キャンティ」の一部として認識されています。
  5. キャンティ・クラシコの独立
    1996年、キャンティの一部として認められていたキャンティ・クラシコは、独立したD.O.C.G.として認められるようになります。高品質で長期熟成にも耐えられるワインを生産するキャンティ・クラシコは、国際品種のブレンドも一部認められると一躍国際的にも受け入れられるようになりました。
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イタリアワインの定番「キャンティ」ですが、イタリアのワイン法の制定と共に発展してきたワインなんだね!キャンティを造るブドウ品種こそが、サンジョヴェーゼであり、イタリアワインを語る上で欠かせない品種なんだ!!

スーパータスカン〈スーパートスカーナ〉の台頭

イタリアワインの魅力の一つでもあるスーパータスカンと呼ばれるワインをご存知でしょうか?スーパータスカン〈スーパートスカーナ〉は、はっきりとした定義はありませんが、一般的にイタリアのワイン法〈D.O.C.〉の枠組みに拘らず、トスカーナで造り美味しくて品質の高いワインを総称したワインのことを言います。

  • スーパータスカンの元祖 ティニャネッロ
    アンティノリ社が造った「ティニャネッロ」がスーパータスカンの元祖だと言われています。アンティノリ社は、自社管理のティニャネッロ農園で高品質なサンジョヴェーゼと当時としては珍しいカベルネ・ソーヴィニヨン種を植えておりました。フランスの醸造技術も導入し、新樽で仕込んだサンジョヴェーゼ種にカベルネ・ソーヴィニヨン種をブレンドしたワインをVino da Tavolaの格付けで販売しました。
    ※当時サンジョヴェーゼ種にカベルネ種をブレンドさせるD.O.C.の格付けワインは存在しておりませんでした。
  • スーパータスカンの代表格 イタリアワイン法を変えたサッシカイア
    ボルドーワイン好きで有名であったマリオ・インチーザ侯爵が1944年にボルドー5大シャトーのひとつ「シャトー・ラフィット・ロートシルト」から持ち込んだカベルネ・ソーヴィニヨンをトスカーナの海岸エリアにあるボルゲリ地区に植えたのが始まりでした。その土地は、ボルドーのメドック地区に似た石や砂利質土壌が集まる畑であったことから「サッシカイア」と名付けられます。
    ※サッシ=石、カイア=〜な場所
    マリオ侯爵が、先述のアンティノリ社のピエロ・アンティノリ氏の叔父であったことから、アンティノリで醸造を担当しているジャコモ・タスキ氏を招待し、近代的な醸造法を受け継ぎ品質向上に努めました。

    リリース当初、カベルネ・ソーヴィニヨン種を85%も使用していたため、原産地呼称〈D.O.C.〉を名乗ることができずI.G.T.トスカーナ(テーブルワインクラス)としてリリースされましたが、これまでにない洗練された味わいが評価され1980年台には世界的大ブームを巻き起こします。1895年ヴィンテージは、イタリアワインで初めて世界的なワイン誌のワイン・アドヴォケイトで100点の満点を獲得しました。

    その後、圧倒的な人気の高さもあり1994年に「ボルゲリ・サッシカイア」としてD.O.C.に昇格することになります。イタリアでは唯一、単一ワイナリーに与えられたD.O.C.としても有名になりました。
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伝統的なワインも非常に魅了的ですが、サッシカイアのように新たな挑戦を通して、厳格なワイン法までも変えてしまうスーパータスカンの存在もカッコイイですよね〜

ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの躍進

ピエモンテ州のバローロやバルバレスコとに並ぶ、イタリアワインの銘酒のブルネッロ・ディ・モンタルチーノですが、こちらも一人の生産者によって確立されたD.O.C.G.として異彩を放っています。

  • ビオンディ・サンティ〈ブルネッロ種の発見〉
    ブルネッロ・ディ・モンタルチーノを生み出した偉大な生産者こそがフランコ・ビオンディ・サンティです。
    1800年後半、ビオンディ・サンティは栽培していたサンジョヴェーゼ種の中に偶然亜種のサンジョヴェーゼ・グロッソができているのを発見しました。
    もともとモンタルチーノ村では、早飲みのワインを造る産地として知られ、特に軽やかな甘口ワインのモスカデッロ〈Moscadello〉が有名でした。しかし、偶然発見した亜種が長期熟成に耐えられる素晴らしいポテンシャルを持っていると確信した彼は、サンジョヴェーゼ・グロッソ〈ブルネッロ種〉を使用した単一のワインを生産していきます。
  • D.O.C.そしてD.O.C.G.への昇格
    ビオンディ・サンティが造るブルネッロ・ディ・モンタルチーノの品質が知られ、1966年には周辺のワイン農家からもD.O.C.への昇格を促す活動が起き、翌年D.O.C.へ昇格することになります。
    その後1980年に「サンジョベーゼ・グロッソ〈ブルネッロ種〉を100%使用すること」が条件として加わり、D.O.C.G.へ昇格することになりました。フランコ・ビオンディ・サンティは、2013年に亡くなるまでワインを造り続け伝統的で古典的な素晴らしいワインを数多く生み出しました。
  • 伝統と革新を追い求める異端の生産者 バンフィ
    ビオンディ・サンティによって生み出されたブルネッロ・ディ・モンタルチーノによって、世界中にモンタルチーノ村の名前が知れ渡りましたが、「ビオンディ・サンティがワインを造っている村」以外の何者でもありませんでした。そんな中現れたのがイタリア系アメリカ人によって設立されたバンフィでした。
  • バンフィの活躍
    1979年には、世界的なワイン誌ワインスペクテーターで90点を叩き出すとその後も様々なワイン誌にて高評価を獲得し一躍ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの新進気鋭の造り手として有名になりました。世界的なマーケティングも大々的に行い、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノを大人気ワインとして昇格させました。
  • バンフィの挑戦
    2007年からは伝統的な樽を使用した熟成とステンレスでの熟成を行うハイブリット式発酵タンクを導入したり、レーダーを利用した選果台を使用するなど近代技術を率先して導入していきました。
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ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの有名な造り手たちを総称して「3B」と呼んだりするんだ。これは、ビオンディ・サンティに加え、バンフィ、そしてファットリア・バルビの頭文字を取ってこのように呼ばれるようになったんだ!